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Vol.41「ご飯食べた?」
外国暮らしを経験して帰国すると、しばらくは治らないクセというものがあるものです。店主はバンコクで暮らしていた期間より、その後帰国してからの期間の方が長くなった今では、抜けないクセというのはほぼなくなりました。唯一いまだに悩まされている(?)クセといえば、驚いた時にとっさに「オイッ!」か「ウイッ!」と言ってしまうことです。なぜいつもタイ人風の叫び声が出てしまうのかは店主自身にも謎です。なかなか治りません。
3年半前の帰国直後にはこんなことがありました。ある日友人から受けた指摘です。 「何でいっつも『ご飯食べた?』って訊くん?」とのこと。えっ?そういや・・・。そこで、はっと思い当たった店主。それは正にタイ人の「キン・カオ・ル・ヤン?(=もうご飯食べた?)」ではないですか!例えば、夜の10時頃などの当然もうご飯は食べているであろう時間に電話をした相手にも訊いてしまうことがありますし、そもそも友人の疑問は、ご飯を食べたかどうか何でそんなことが気になるんだろう?という点です。それは、店主がタイに住み始めた当時、周囲のタイ人の友人や知人に対して抱いていた疑問と同じです。日本人ならば、会話の出だしに「今日は寒かったねぇ」などと気候を話題にするように、タイ人は「ご飯食べた?」と訊くのが挨拶代わりです。
例えば、タイ語学校に通っていた時のある日の会話・・・店主「あ、校長先生、こんにちは」、校長先生「こんにちは。もうご飯食べましたか?」、店主「いや、まだです」、校長先生「ふーん、私もまだです。午後からも授業?」、店主「はい」、校長先生「そう、じゃぁがんばって」と、こんな感じです。最初の頃は校長先生に「ご飯は?」と訊かれるなんて、もしかしたらちょうどお昼時だし、「じゃぁ一緒にランチはどうですか?」と誘ってくれようとしているのではないか?いや、でも校長先生と食事なんて緊張するし、あぁどうしよう、まだ食べてはいないけど、うーん・・・と瞬時に考えが頭の中をぐるぐる駆け巡った挙句、「た、食べました・・・。」と嘘を答えたりしていました。ところがよくよく観察していると、校長先生だけではなくどんなタイ人でも、大体最初に「ご飯食べた?」と訊く上に、「まだ」と答えても「ふーん」ですし、「食べた」と答えても「何食べた?どこで食べた?」と訊くわけでもありません。そういうわけで、これはタイ式の挨拶であることに途中から気がついた次第です。
但し、「もうご飯食べた?」と訊かれて、当然「食べたよ」と答えるべき時間・・・例えば午後2時や3時頃に「今日は忙しくてお昼を食べ損ねた」などと答えると、「マイ・ディーィィ!キン・シッ!(あかんやーん、食べろって!)」と大げさなリアクションが返ってくる時があります。つまり、この挨拶はどうやら「ご飯を食べる=体調が良好である」という確認のために交わされているようで、「今日は食べる時間がないから食べない」などと答えると、空腹で具合が悪くなるのではなかろうか?とものすごく心配されます。もしタイ人の友人を心配させたくなかったら、「もうご飯食べた?」と訊かれた時点で食べていなければ、必ず「ヤン(=まだ)」と答えなければなりません。「まだ」ということは、「まだだけど必ず食べる」という意味が込められているからです。元来、タイ人というのは農耕民族ですから、三食きちんと食事を採ることこそが健康維持の秘訣という発想が根付いているのかもしれませんね。いかにも両親やおじいちゃんおばあちゃんが「健康に育つように」とかわいがっているような「デブな子供」は、日本ではほとんど見かけなくなりましたがバンコクではいまだにしょっちゅう見かけます。
(2007年7月)
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